約20年ほど前に読んだエッセイで、今でも印象に残っているものがあります。3、4ページほどの短い部分ですけど不思議とそれは記憶に残っています・・・
作家、遠藤周作さんのエッセイ。遠藤さんといえば小説家以外にもプロデューサーやボランティア、CMなど生前は色々な活動をされた方ですから、ご存知でしょう。ちなみに遠藤さんの小説はあまり読んでません(^^ゞ
ずいぶん前の本なので、もう絶版かな~と思って検索したら昨年、新装版が発売されてました!このエッセイの中から引用すると
「ぼくの初期の作品に『海と毒薬』という小説があるけど、この小説を書いているとき、ある不気味なイメージを象徴する物を出したかった。
不気味な雰囲気を漂わすものがないかと考えたわけです。一生懸命に考えた。が、意識的にいくら考えても出てこない。そのことで毎日毎日苦しんだのち、たまたま電車に乗ることがあった。もう考えあぐねて茫然として、まったく小説のことも考えられないような状態になっていた・・・」
ところが、極限状態になっていた遠藤さんに突然「フッ」とあるイメージが浮かんできたというのです。そのイメージのおかげでこの小説が成功したんだそうです。
「このイメージは、ぼくの無意識の所産であって、意識の世界でいくら考えても出てこなかった。そういうふうに無意識の中には思いがけず自分の能力をひきだしてくれるものがある。」
ご本人以外の例も、いくつか紹介されています。確かに遠藤さんに限らず、道を極めたような方は似たような話をされますね。なにかの拍子に自分の実力以上の力が発揮される時があると。人間には究明されていない、いろんな能力があるのでしょうね。
そして遠藤さんはこう結んでいます。
「では、無意識の世界をつかまえるにはどうしたらいいか?
まず、第一に自分の能力ギリギリいっぱいまで努力しなければいけないということは確かです。大半の人は途中で自分の能力に絶望するでしょう。が、絶望したらすべては水の泡。絶望せずにトコトン悩み抜けば、必ず無意識の力はあなたに働きかけるはずです。自分の中に潜む能力を引き出したかったら、決して自分に絶望してはいけません。」
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